トラック運転手を職業とする人が働く労働時間は、ほかの職種に比べて長時間に及ぶとされていますが、2024年4月からは制度の変更により労働時間に上限が課されます。
この記事では、トラック運転手の労働時間の現状や、2024年4月から適用される制度のポイントについて解説しています。また、平均収入や仕事内容についても紹介しているので、トラック運転手を目指す人はぜひ読んでみてください。
トラック運転手の労働時間は、渋滞などの道路状況や荷物の積み下ろしの荷待ち時間により、長くなりがちだといわれています。ここでは、トラック運転手の労働時間の実態について解説します。
令和3年に国土交通省が行った「トラック輸送状況の実態調査」によれば、トラック運転手の1運行あたりの拘束時間は、荷待ち時間がない場合で平均10時間38分、荷待ち時間がある場合は平均12時間26分という結果でした。
走行距離別に見ると、走行距離500km以下の短・中距離運転手と、走行距離500km以上の長距離運転手では拘束時間に大きな差があります。短・中距離トラック運転手の平均拘束時間が10時間8分だったのに対して、長距離トラック運転手の平均拘束時間は12時間26分でした。全体として、1運行あたり10時間以上は拘束される傾向にあるでしょう。
平成27年に厚生労働省が実施した「運送業における労働時間と働き方に関する調査」では、トラック運送業で1人あたりの時間外労働が45時間以上と回答した企業は全体の36.5%でした。時間外労働が80時間を超える企業も6.6%あり、トラック運送業の時間外労働時間は、タクシーやバスなどの運送業に比べて長くなっています。
「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」では、トラック運転手の1日あたりの拘束時間は原則として13時間までで、延長する場合でも16時間が上限と定められています。また、運転時間は2日を平均して9時間までと限度が決められています。
しかし、トラック運転手やバス・タクシー運転手などの運送業は、労働基準法で定める時間外労働の上限規制が適用されない職種です。一般的な企業では、36協定を締結しても従業員に月45時間、年360時間を超える時間外労働をさせることは原則できませんが、運送業は時間外労働の上限規制の適用外であるため、長時間労働が常態化しています。
トラック運送業は、厚生労働省から「長時間労働の指摘がある業種」として挙げられていて、1週間の労働時間が60時間を超えている運転手が全体の約40%を占めていることや、荷待ち時間の発生により拘束時間が長くなっていることが指摘されています。
運転手の不足を休日出勤や早出残業で補っている例も多く、運転手の労働時間短縮が以前からの課題となっています。
働き方改革の一環として、2024年4月から運送業には「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」が適用されることになりました。一般的には「改善基準告示」と呼ばれるものです。
これまでは、時間外労働の上限規制が適用されなかったトラック運転手の労働環境を改善するため、時間外労働や休息時間などに一定の条件が定められます。
労働基準法の一般則では、36協定を結んだ場合の時間外労働は年360時間まで、労使が合意し特別条項を適用した場合でも720時間までとされています。2024年4月から適用される「改善基準告示」により、トラック運転手の時間外労働には年960時間の上限が設けられることになりました。月平均で80時間という基準も適用されます。
これまでは、特別な事情があれば、上限なしで時間外労働の延長が許されてきた運送業ですが、2024年4月以降は上限を超えて時間外労働をされた場合、事業者に罰則が科されます。
改善基準告示では、トラック運転手の休息時間について基準が設けられています。トラック運転手の1日の拘束時間は原則として13時間が上限ですが、始業開始時刻から起算した1日(24 時間)を「拘束時間+休息時間」とするため、拘束時間が13時間以内の場合、必要な休息時間は11時間以上です。
拘束時間を延長するときは最大16時間まで延長可能ですが、拘束時間が16時間以内の場合は休息時間を8時間以上とらなければなりません。また、拘束時間を延長できる回数には限度があり、15時間を超えてもよい回数は1週間に2回までです。それにより、休息時間が9時間未満になる回数も週に2回までが限度となります。
トラック運転手の1か月あたりの拘束時間にも、制限が課されます。拘束時間は、1か月につき原則として293時間が上限となります。ただし、労使協定を結んだ場合、1年のうち6か月までは1か月あたりの拘束時間を320時間まで延長可能です。拘束時間の延長には条件があり、1年間の拘束時間が3,516時間(293時間×12か月)を超えないようにしなければなりません。
運転時間は、2日間の平均運転時間が9時間以内に制限されるのに加えて、2週間を平均した1週間あたりの運転時間は44時間以内が限度です。さらに、連続で運転してよい時間は4時間以内で、時間になったら運転を中断して30分以上の休憩をとらなければなりません。
まとめて30分の休憩をとるのが難しい場合は、休憩時間を分割できますが、1回の休憩につき10分以上休む必要があります。サービスエリアなどに駐車できないといった事情があり、運転開始から4時間のタイミングで休憩がとれない場合は、運転時間を30分まで延長できます。
トラック運転手の拘束時間や運転時間に上限が設けられることで、労働時間が短くなり、運送業の輸送能力が低下することが懸念されているのです。
改善基準告示によるトラック運転手の労働時間短縮を起因として、運送業界では運転手がさらに不足するといわれています。時間外労働の上限時間が定められたことにより、これまではひとりのトラック運転手が運送していた荷物を、ふたりの運転手で担わなければ運べないケースが出てくるためです。
「2024年問題」と呼ばれるこの課題に対して、運転手の増員で対応する配送事業者が多いため、トラック運転手の需要は今後も増えていくでしょう。
トラック運転手になろうと考えている人が知りたいのは、収入がどれくらいになるかという点や、具体的な仕事内容ではないでしょうか。つづいては、トラック運転手の平均的な収入額と、業務内容について見ていきます。
厚生労働省による職業情報提供サイト「jobtag」では、トラック運転手の平均年数は令和4年度の統計で477.4万円となっています。この数字は長距離トラック運転手や短・中距離トラック運転手など、すべてのトラック運転手の年収を平均したもので、走行距離が長い長距離運転手の方が、短・中距離運転手よりも年収が多くなる傾向にあるのです。
トラック運転手の仕事は、トラックを運転して荷物を指定場所まで運ぶことが業務の中心です。乗車するトラックは、小型トラックから中型、大型トラック、トレーラーなどがあります。
配送の種類もさまざまあり、宅配便や引っ越し、企業や小売店に荷物を届けるルート配送など、事業所によって業務内容が異なります。トラックを運転する以外に、荷物の積み下ろしや梱包、集荷といった作業が発生するケースが多いです。
また、ルート配送や宅配では顧客への営業活動をすることもあります。
トラック運転手は、車の運転が好きな人にとっては大きな魅力を感じる仕事でしょう。長距離運転手になれば、大きな車体を運転していろいろな地方へ行けるため、休憩の時に各地のグルメを堪能できるのも楽しみのひとつです。
運転中はほぼひとりで過ごすので、職場の人間関係に気をつかうことが少ない職種でもあります。配送先の顧客と会話をすることはありますが、基本的にはトラックの車内にひとりでいる時間が多いので、人間関係に気をつかうことなく働けるでしょう。
運送業は年々需要が高まり、荷物を運ぶことで人々の生活を支える重要な役割を果たしています。豊かな社会に欠かせない業務を担っているという実感や、無事に荷物を運び終えたときの達成感が、やりがいにつながるでしょう。
トラック運転手を目指すなら、トラック運転手に必要な条件について知っておきましょう。ここでは、トラック運転手の仕事に応募するときのポイントについて解説します。
普通運転免許でも、車両総重量が5トンまでのトラックは運転できますが、普通運転免許だけで応募できるトラック運転手の仕事は限られています。そのため、中型免許や大型免許を取得したほうがトラック運転手として採用されやすいでしょう。
中型免許の取得資格は20歳以上で、普通運転免許での運転経験が2年以上ある人です。中型免許を持っていると、車両総重量が7.5トン以上11トン未満のトラックを運転できます。
平成29年に新設された準中型免許の制度では、18歳以上であれば普通運転免許を持っていなくても準中型免許を取得して、3.5トン以上7.5トン未満のトラックを運転できるようになりました。
大型免許は、車両総重量が11トン以上のトラックを運転できる資格です。取得条件は21歳以上で、普通運転免許をとってから3年以上経っていることが条件です。
トラック運転手の人員が不足していることから、未経験でも応募可としている企業が増えています。学歴に関係なく募集している業種でもあり、採用までのハードルはそこまで高くありません。
普通運転免許しか持っていない未経験の人でも、入社後に中型免許や大型免許の取得の支援をしている企業もあり、未経験からトラック運転手になれる環境が整えられています。支援の方法は企業によっても異なりますが、自社の研修センターで教習を受けられる企業や、免許の取得費用を補助している企業などがあります。
長距離運転手は片道300km以上の距離を走行しなければならないため、最初から長距離運転手になるのは気が引けるという人もいるでしょう。未経験からトラック運転手を目指すのであれば、1日の走行距離が60kmから70km程度で、運転時間も5時間くらいの短距離運転手からスタートしてみてはいかがでしょうか。
長距離運転手は大きな車体を運転しますが、短距離運転手は小型トラックで少ない荷物を運搬する仕事なので、トラックが初めてでも運転しやすいです。短距離運転手として運転の経験を積んで、自信がついたら中距離・長距離運転手にステップアップするのがおすすめです。
トラック運転手は走行距離が長いほど年収が上がる傾向にあり、長距離運転手になれば収入アップが期待できるでしょう。
トラック運転手は未経験でもなれる職業ですが、実際はどのような人に向いている仕事なのでしょうか。トラック運転手に向いている人の特徴について、解説します。
トラック運転手の業務は運転がメインなので、車の運転が好きな人に向いています。勤務時間の大半をトラックの運転が占めるため、車の運転が苦手だと仕事がきついと感じる可能性があります。
運転が好きであれば長時間の運行でも疲れが溜まりにくいので、効率よく業務を進められるでしょう。
トラック運転手の仕事は座って運転することがメインとはいえ、体力を消耗します。同じ姿勢で運転を続けることは体に負担がかかりますし、手作業で荷物の積み下ろし作業をする場合は腕力も必要です。
長距離の運転に耐えられ、重い荷物を手作業で積み下ろしできる体力は備えておいたほうがよいでしょう。
トラックの運転は、単調な道が続くと集中力が続かず、退屈に感じてしまうことがあります。トラック運転手はひとりで乗車して長い距離を走る仕事なので、誰とも会話せず黙々と運転できる人に向いています。
また、荷物の積み下ろしと運転の繰り返しが業務の中心になるため、単純作業が得意な人に向いているでしょう。
運送業者の社員になって配送業務をする場合は、業務に使用するトラックを会社が用意します。しかし、個人事業主として業務委託で配送を請け負うケースでは、自前のトラックが必要です。
会社員はほぼ月給制などの固定給ですが、委託でトラック運転手をする場合は歩合制のため、努力次第で収入アップを狙えるでしょう。委託運転手の仕事は、業務に使う車両さえあればすぐにスタートできるので、まずは自前のトラックを用意することから準備を始めましょう。
トラック運転手になるために自前のトラックを購入するときは、初期費用をできるだけ抑えて、購入の後も安心して長く業務に使用できる車両を選びたいです。自前のトラックを購入する際のポイントについても押さえておきましょう。
大型トラックを新車で購入するには、費用が2,000万円以上になるのが一般的で、小型の2トントラックでも新車は500万円以上が相場です。自前のトラックを購入したくても、高額な初期費用を用意できないというケースは多いでしょう。
そこでおすすめなのが、中古トラックです。中古トラックの価格相場は、走行距離にもよりますが小型トラックで約70万円から、中型トラックで約100万円から、大型トラックで約200万円からとなっているので、新車よりも少ない費用で購入できます。
中古トラックは、トラックメーカーまたは中古トラック専門店で購入ができます。自社メーカーのトラックしか扱っていないトラックメーカーは、車種の選択肢が少なくなります。幅広いメーカーのなかから中古トラックを選びたい場合は、複数メーカーのトラックを販売している中古トラック専門店を選びましょう。
中古トラック専門店を選ぶときは、中古トラックの販売実績が豊富で信頼できる中古トラック専門店を見つけましょう。販売している中古トラックがしっかり整備されているか、取り扱い台数は多いか、アフターサービスはきちんと提供されているかなどが、中古トラック専門店を選ぶポイントです。
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こちらの記事では、中古トラックの選び方について解説しています。購入する際の注意点や業者も見極め方も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
トラック運転手は労働時間が長くてきついイメージのある仕事ですが、労働環境の改善が進められつつあり、労働時間の負担は軽減されていくでしょう。トラック運転手を目指すなら、新車よりも費用を抑えて手に入れられる、中古トラックの購入を検討してみてはいかがでしょうか。
ART FRIEND AUTOは、自社で修理から車検、車両のカスタマイズまでを一括しておこなう中古トラック専門業者です。豊富な知識と経験をもつスタッフが、丁寧に中古トラックを選ぶお手伝いをいたします。
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