配送コストの上昇や長時間労働の問題など、物流業界はたくさんの課題を抱えています。経費増加や価格競争の影響により、利益率の低下に悩まされている運送業者も多いのではないでしょうか。
この記事では、物流業界における9つの課題と、それらの課題を解決するために物流業界で採り入れられている、7つの解決策について解説しています。
物流業界は、いくつもの課題を抱えています。物流業界で生き残っていくためには、一つひとつの問題点を把握し、解決していくことが必要でしょう。
ここでは、物流業界を取り巻く9つの課題について、掘り下げます。
荷物を運搬するドライバーの人員不足は、物流業界において大きな課題となっています。物流業界では、配送の需要が高まり、仕事量が増えているのに対して、働き手の人数は減っている状況です。
物流業界で人手が不足している要因のひとつは、少子高齢化にあるといわれています。物流を担うドライバーの平均年齢は上がっていて、多くの企業でベテランドライバーや、年齢層の高いドライバーが活躍しています。
その一方で、若者の人口は減少傾向にあり、若年層がドライバーの仕事に就くことが少ないため、新たな働き手の育成が追いついていません。ドライバー不足は、物流業界全体に影響を及ぼします。配送の遅れや、荷物の破損・紛失などの配送事故が増えて、配送サービスの質が低下する可能性があるでしょう。
また、ドライバーひとりあたりの仕事の負担が大きくなるため、長時間労働が常態化して、離職者がさらに増えることも考えられます。
物流業界では、ドライバーだけでなく、倉庫業務でも人手不足が顕著になっています。少子高齢化の影響で、全体的な労働人口が減っているうえに、倉庫内作業は力仕事が多く、体力の少ない高齢者を雇用しにくいという性質があります。
さらに、倉庫内の仕事は「きつい」というイメージがあり、積極的に働きたい若者が少ないため、人材の確保が難しいのが現状です。インターネットショッピングの需要拡大で、扱う荷物の量が増えている一方、人手が不足していることにより、倉庫内の労働者の負担は増加傾向にあります。
コスト削減や燃料費の高騰といった要因から、待遇改善も難しく、働き手が定着しにくい環境です。
インターネットショッピングの競争激化により、近年では送料無料や翌日配送があたりまえのようになっています。これらのサービスは、利用する側にとっては非常に便利ですが、物流の面でみると配送業務の負担が増えることになり、ドライバーの労働環境を悪化させることにつながっています。
配送ドライバーは、積み込みのために早く出勤したり、荷下ろしまでの待機時間が発生したりして、拘束時間が長くなりやすい仕事です。それに加えて、配送の負担が増えているため、長時間労働や深夜勤務が続いているドライバーも少なくありません。
ドライバーは、仕事が大変なわりに賃金が少ないともいわれていて、ドライバーの給与水準を上げることも課題となっています。
「もっと早く商品を届けてほしい」という消費者からの要望に応えて、多くのECサイトでは翌日配送や当日配送のサービスをうたっています。
これらの配送サービスを支えているのは、物流業界ですが、短時間に配送業務が集中するため、ドライバーにとっては大きな負担になるでしょう。また、急いで配送することにより、荷物の取り違えや破損などのミスも起こりがちです。
ドライバーの業務負担を減らすためには、配送ルートの効率化や、物流システムの見直しが必要でしょう。
個人宅へ荷物を届ける小口配送は、大口配送に比べて多くのドライバー人員を必要とします。インターネットショッピングや、フリマアプリを始めとするインターネットサービスの需要増加で、小口配送の件数は急激に増えています。
増え続ける小口配送に対して、ドライバーの数が不足しているため、物流業界は圧迫され、ドライバーの負担も増える一方です。
さらに、小口配送は大口配送よりも、トラックの使用台数と配送の回数が多く、輸送時のCO2排出量が多くなってしまうという問題もあります。
再配達によるドライバーの負担は大きく、個人宅に荷物を持って行っても受取人がいない場合は、同じ届け先を何度も訪問しなければならないケースもあります。再配達をしても追加料金は発生しないため、配送業者にとっては、無駄なコストがかかり、配送効率も悪くなるというデメリットしかありません。
小口配送が増加したことで、再配達の件数自体も増えており、再配達をいかに減らすかということが課題となっています。
石油の供給が不安定になっている影響から、燃料費が高騰して、物流業界全体のコスト増大を招いています。燃料費が上がると、トラックなどの輸送コストが高くなるため、配送業者の利益が下がる原因になります。
燃料費が増えても、すぐに運賃に反映することは難しく、価格転嫁ができないぶん、配送業者の経営を圧迫するでしょう。配送ルートを効率的にして、燃料費を減らすなどの対策が必要です。
2023年4月1日に労働基準法の改正があり、時間外労働が月60時間を超えた場合は、大企業・中小企業にかかわらず、50%以上の割増賃金率で時間外手当を払わなければならないと定められました。
2023年3月31日まで、中小企業に関しては、月の時間外労働が60時間を超えても、割増賃金率は25%でした。法改正により、25%の割増賃金率が50%に引き上げられたので、月60時間を超える時間外労働が発生した場合は、人件費が以前よりも増えることになります。
長時間労働が常態化している企業では、深刻な人手不足もあいまって、時間外労働が月60時間を下回るように調整するのは難しいケースもあるでしょう。
労働環境を改善するための「働き方改革」がスタートし、時間外労働の上限制限などについて定める「働き方改革関連法」が施行されました。2019年4月からは大企業、2020年4月からは中小企業が対象となっています。
自動車運転業務については、猶予期間が5年設けられ、2024年4月から適用される予定です。これにより、自動車運転者の時間外労働の上限が、年960時間に規制されます。
物流業界で「2024年問題」と呼ばれるこの時間外労働の上限規制は、トラックドライバーの労働時間が減ることにより、物流業界にさまざまな影響を及ぼすといわれています。たとえば、時間内に輸送できる荷物量が限られてくるため、配送業者にとっては売上や利益が減少するリスクがあるでしょう。
また、ドライバーにとっては、残業時間がいままでより少なくなることにより、残業代が減って、収入が下がってしまう可能性があります。2024年問題への対策は、物流業界全体の大きな課題なのです。
物流業界を取り巻く課題は、簡単に解決できるものではありませんが、従来のやり方を見直したり、新しいシステムを導入したりすることで、解決の糸口を見つけられるでしょう。
物流の問題を解消するための、7つの対策案を紹介します。
物流システムの活用は、業務を自動化して、業務効率を上げるために有効な手段です。物流システムは、すでに物流関係の多くの企業で採用されています。
配送業務での活用例は、最適な配車・配送ルートを算出するソフトやシステムの導入により、配送ルートを最適化することが挙げられます。配送ルートを決定するには、道路の混雑状況、積載可能なトラックの空き状況、ドライバーの稼働状況など、さまざまな要素をもとに担当者がルートを考えなければなりませんでした。
システムを使えば、短時間でもっとも効率よく配送できるルートを自動で算出できるため、ルートを決めるためにかかっていた業務負担を大幅に軽減できます。配送ルートの最適化には、追跡システムも有効です。従来は、顧客から配送中の荷物について問い合わせがあった場合、ドライバーに電話をして確認を取るのが一般的でした。
しかし、運転中などですぐに電話に出られないことが多く、対応が遅れてしまうという問題がありました。追跡システムを導入すると、電話でドライバーに確認しなくても、荷物の配送状況をシステム上でチェックできるため、問い合わせへの対応がスムーズになります。
急な依頼があったときも、システムでドライバーの位置や状況を把握して、チャットなどをつうじて的確な指示を出せるのがメリットです。倉庫業務においても、在庫管理をデジタル化して、蓄積されたデータをもとに在庫を最適化する手法が採り入れられています。データを活用して在庫分析や需要予測をおこない、過剰在庫や欠品を防ぐのに有効な手段です。
倉庫管理システム(WMS)の導入も進んでいます。WMSは、入荷・出荷管理や在庫管理、棚卸し管理、返品管理、ロケーション管理など、倉庫内の業務を一元管理できる機能を備えていて、倉庫業務の効率化を実現できるでしょう。
サプライチェーンとは、商品が生産されて、消費者のもとに届けられるまでの過程を指します。自社で製造から販売まで一括しておこなう企業は少なく、原材料の調達→加工→製造→流通→販売という一連の流れには、複数の企業がかかわっているのが一般的です。
サプライチェーンの流れを可視化することで、製造や物流などの各過程における問題点を把握し、業務を効率化させることが期待できます。
リアルタイムで需要予測と販売状況を確認できるため、製造量のコントロールや適正な在庫管理ができ、無駄を減らしてコスト削減につながるのもメリットです。
物流拠点を分散させることも、物流の課題解決に有効な手段です。物流拠点を増やすためには、初期投資や新たな人員の確保などの負担がありますが、それに見合うメリットもあります。
たとえば、複数の物流拠点をもつことで、拠点から配送先までの距離が短くなり、配送にかかる燃料費や人件費を抑えられます。長距離走行になると、出荷から荷物が到着するまでのリードタイムが長くなりますが、物流拠点と配送先の距離が縮まることで配送スピードが早くなり、顧客の満足度も上がるでしょう。
物流拠点の分散化には、災害対策としての一面もあります。拠点がひとつだけの場合、もし災害に見舞われてその拠点が機能しなくなると、すべての業務がストップして、売上が入らない状況に陥るリスクがあります。
拠点が複数あれば、停止してしまった拠点の業務をほかの拠点でカバーでき、リスクを減らせるでしょう。
自社の業務を外部の専門業者に委託することを、アウトソーシングといいますが、物流業界でもアウトソーシングを提供する動きがあります。
物流アウトソーシングでは、物流業務・システム管理を外部の専門業者が担うことで、物流サービスの質を向上させます。EC事業者などが自社で物流業務をおこなう場合、物流センターの運営や在庫管理、入出荷管理など、物流に関わる業務の負担が大きくなるでしょう。
そこで、複雑な物流管理をプロの業者に任せることにより、商品企画やプロモーションなど、EC事業の中核となる業務に集中できるというのが、物流アウトソーシングの利点です。さらに近年では、注文データの処理や顧客対応まで専門業者が請け負う「フルフィルメントサービス」が増えています。
フルフィルメントサービスでは、物流機能だけでなく、注文のキャンセルが発生したときの処理や、住所不明の顧客への確認、問い合わせへの対応まで、専門業者が一括して行います。
物流業務をサポートするロボットが開発され、現場の負担軽減のためにロボットを導入する物流企業が増えています。ロボットに荷物の仕分けやピッキング、重い荷物の運搬といった作業を任せることで、人員不足に苦しむ現場の負担を減らします。少ない人員で仕事ができるため、人件費を抑えることにもつながるでしょう。
人の手で作業をおこなうと、どうしてもミスが発生するケースがありますが、ロボットは正確な作業ができるので、ミスの削減にも貢献できます。
再配達の件数を減らすための取り組みとして、宅配ボックスの設置が進んでいます。荷物を受け取る側にとって、家にいないときでも荷物を受け取れる宅配ボックスは非常に便利です。
タイミングが悪く在宅中に玄関先まで出られないときや、人との接触をさけたい場合にも、非対面で荷物をボックス内に置いていってもらえるので安心でしょう。配送業者にとっては、受取主が不在でも再配達をしなくて済むため、効率よく配送業務を進められるというメリットがあります。
一戸建てやマンションのエントランスなどに設置されている宅配ボックスのほかにも、駅やスーパーの店先などに設置されてオープン型宅配ボックスというものがあり、誰でも利用できる宅配ボックスとして設置が推進されています。
海外では、ドローンを使って荷物を配送する技術が、実用化されているところもあります。日本でも、ドローン配送の実用化に向けた飛行実験がおこなわれていますが、安全性の確保などの観点から、導入には至っていません。
その一方で、AIを活用した物流の効率化が進んでいます。物流予測や配車、従業員のシフト管理といった業務にAIを活用することで、業務を最適化でき人件費や燃料費などのコストを削減できる可能性が高まるでしょう。
AIには学習機能があり、経験を重ねるごとに精度が増していくといわれています。
物流業界の課題に対する取り組みとして、国土交通省は「物流総合効率化法」を打ち出しています。物流業界における人手不足や、消費者ニーズの多様化、小口輸送の増加といった問題に対して、流通の一体化・輸送の合理化を図り、流通業務の効率化を推進するものです。
流通の効率化を図る事業をおこなう企業は「物流総合効率化法」で定められた要件を満たすことにより、税制特例や補助金などの支援を受けられます。認可を受けるためには「2以上の者(法人格が別)が連携すること」など、一定の条件があります。
流通業務総合効率化事業の対象となる、3つの取り組みについて解説します。
従来のように、個々の業者がそれぞれトラックを手配して配送する手法では、荷物の積載率が低いうえに、トラックの台数も多く必要です。そこで、人件費や燃料費の無駄を削減するために、輸配送の共同化が推奨されています。
輸配送の共同化では、2社以上の企業が協力して、複数業者の商品をまとめて1台のトラックに乗せ、同じ配送先に運びます。個別納品ではなく一括納品をおこなうことで、トラックに積み込む荷物の積載量を最大化し、輸送の効率化が期待できるでしょう。
工場で生産された製品は、各地に分散された倉庫や荷捌き施設に輸送され、そこから個々に各店舗などへ納品されるのが一般的です。しかし、それでは輸送効率が悪いため「物流総合効率化法」では「輸送連携型倉庫」の設立が推奨されています。輸送連携型倉庫は、特定流通業務施設とも呼ばれます。
輸送網を集約する目的は、輸送にかかるコストの削減や配送の効率化、人手不足問題の解消です。
モーダルシフトは、これまで長距離トラックに頼っていた輸送業務を鉄道や船舶など別の配送方法に切り替えるという方法です。
鉄道や船舶は、トラックに比べて積載量が多く、一度に大量輸送が可能です。モーダルシフトは、配送業者のドライバー不足や燃料費高騰といった問題を解決するだけでなく、CO2排出量が小さく環境負荷の少ない輸送手段として注目されています。
2020年に、新型コロナウイルスの感染拡大を発端として、外出しなくてもショッピングなどができるECサイトや、オンラインサービスの需要が急増しました。それにより、物流業界の需要は右肩上がりに増加し、今後も拡大する傾向にあるでしょう。
その一方で、深刻化している人手不足など数々の問題に対して、従来のアナログな手法では解決が困難な状況になってきています。最新技術や合理的なシステムの導入を進めて、物流業界全体で課題に取り組む姿勢が求められるでしょう。
物流のデジタルトランスフォーメーションを略して「物流DX」といいます。物流DXは、長時間労働の蔓延や慢性的な人手不足といった、物流業界の課題に取り組むために、必要な要素だといわれています。
物流DXは、物流業務に機械やデジタルを導入することで、業務の効率化を図るものです。具体的には、AIやIoT、ビッグデータの活用などが挙げられます。物流DXの取り組みを進めることで、在庫管理の効率化や、倉庫内作業の自動化、配送ルートの最適化、物流品質の向上といった、さまざまな業務の改善が見込めます。
物流業界において、物流DXの必要性は認識されているものの、導入については進んでいないのが現状です。システムを導入するための費用や、運用にかかるコストの問題もありますが、既存システムとの互換性も足かせとなっています。
物流DXの手法には、さまざまな技術があり、そのなかでも代表的なものを紹介します。機械を活用した物流DXでは、自動配送ロボットによる無人宅配や、ドローンを使った配送スピードの向上、ピッキング・仕分け作業を自動化する物流ロボットなどが、人手不足解消の手段として期待されています。
デジタル技術による物流DXの例としては、AIによる配車や配送ルートの最適化、IoTを活用した入出荷・在庫のデータ管理などが挙げられるでしょう。
そのほかにも、ブロックチェーンを活用した、異なる企業同士がリアルタイムで製造工程や配送状況の情報を交換できるシステムの開発などが進められています。
実際に企業で物流DXが活用された事例について、紹介します。倉庫の自動化・機械化では、日用品総合卸商社の株式会社坂塲商店における、荷下ろしロボットの導入事例があります。
この企業では、従業員が1日あたり約1万個のダンボールをコンベヤに運んでいました。荷下ろしロボットの導入で、ダンボールの運搬をロボットが自動でおこなうようになり、従業員の作業負担が大幅に減りました。
荷下ろしロボットの導入後は、作業中に従業員がケガをする件数も減り、労働環境の改善がみられます。配送デジタル化の事例として挙げられるのは、総合物流企業の株式会社スーパーレックスで導入された、AI搭載の自動配車システムです。
この企業では、地図ソフトを用いて配車をおこなっていたため、配車作業に多くの時間を割いていました。また、固定配送ルートの変更が発生した場合、丸2日間かけてルートを決め直しており、それも担当者の経験や土地勘に頼っている状態でした。
そこで、配車業務を効率化するために導入されたのが、AI搭載の自動配車システムです。独自開発したAIは、何十万とおりものルートを瞬時に計算し、最適な配送ルートを選択します。担当者の勘に頼ることなくAIの技術で最適な配送計画が作れるため、配車業務の引継ぎが容易になりました。
トラックの積載率や、ドライバーの稼働時間を入力すると、燃料費・人件費を最小限に抑えた配車計画が提案されるので、配送コストの削減にも貢献しています。
物流業界の課題一覧と解決策を紹介しました。次にこちらではラストワンマイル配送について、意味や市場規模などに焦点を当て解説しますので是非ご覧ください。
物流業界には多くの課題があり、人手不足は特に深刻です。運送業でもドライバー不足の状況は続くといわれており、人材確保に向けた取り組みが必要でしょう。
新規ドライバーを集めるための、ひとつの方法として、おしゃれなトラックを自社で保有することが挙げられます。デザイン性のある装飾や、快適な内装を備えたトラックを用意することで、自社の魅力をアピールできるでしょう。
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